
ALOHA! Plan ZのYuriko Galuraです!
ハワイの感染者数の状況は下降トレンドになってきています。
7日間の平均感染者数は232人(10月7日現在)で、先月に比べると大幅に改善されました。ハワイのワクチン接種完了率は69%を上回り70%までもう一声。
オアフ島だけを見れば、ワクチン接種完了率は70%を超えています。
ここ1ヶ月以内に、レストランのアルコール提供時間、イベントやスポーツ観戦など、現在ハワイで行われている制限の緩和が徐々に行われていくことになりました。
最近よくニュースでも日本人観光客がいつ戻ってくるのかが話題となっており、ハワイ側としては日本人観光客を迎え入れたいという思いが強く感じられます。また、地元の人たちも日本に早く行きたいという声をあちこちで聞きますね。
さて、今までこのコラムではあまり触れてこなかったハワイの学校事情。
パンデミックが始まってから、ハワイの学校の状況はどのように変化していったのでしょうか?
現在の状況は?学校の先生やスタッフはどのように安全を確保しているのでしょうか?
ハワイの公立小学校の担任教師をされながら、ジュエリーブランド、リコ・アロハ(Lico Aloha)のオーナーとしても活躍されている、日本人のエリコ・ヒロセさんに貴重なお話をお伺いすることができました。

日本とアメリカのシステムの違い
日本とアメリカの学校のシステムは大きく異なります。
アメリカでは連邦政府が規則を決めるというよりも、各州の教育省に委ねられているところが大きく、州やカウンティ(郡)、さらには学区によっても学校のシステムは異なります。
ハワイの公立学校では通常8月に新年度が始まり、卒業式は5月末。6月、7月は長い夏休みを迎えます。学期は4学期制で春休み、秋休み、冬休みは1週間から10日間ほど。
ハワイのエレメンタリースクール(小学校 )は、日本でいうキンダーガーテン(幼稚園)にあたる学年(だいたい5歳くらいが入学年齢)が含まれますが、幼稚園に当たる期間は1年間のみで、公立のエレメンタリースクールはホノルル市では1年生から5年生まで、ホノルル市以外では1年生から6年生までとなります。
ヒロセさんが教えている小学校では、通常のクラスは22人程度。
国語、算数、理科、社会が主要科目となり、それ以外に図工、体育なども担任の先生が教えているそうです。
ベースとなるカリキュラムは国から支給されるものの、日本と比べると教え方はかなり自由だというヒロセさん。
図工では折り紙を教えたり、体育ではヨガを取り入れたり、クリエイティブな方法で生徒へ教えているそうです。
主要科目以外に国が力を入れているのが、STEM教育という問題解決や考える力を与えるための授業。
STEMとはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Math(数学)の略で、プロジェクトベースのチャレンジを生徒たちに与え、これからの社会で最も成長が著しい分野への人材育成を目的としています。

パンデミックがスタートした2020年の学校教育
「パンデミックが始まった2020年3月から12月いっぱいまでは完全リモート授業を行っていました。州から生徒全員へのパソコンの貸し出しが約束されていましたが、私が勤めている学校は配布に時間がかかってしまい、リモート授業がスタートした当時は、電話やiPadから授業参加をする生徒や、インターネット環境が悪く授業開始に間に合わない生徒などもあり、混乱することもありましたね。」
と語るヒロセさん。先生同士でも初めてのリモート授業の方法を探るべく、ITの勉強をしたりと苦労は多かったと言います。
2021年1月から始まった3学期からは、リモートと通学と半々へ。
安全を保つために、1クラスをAグループとBグループに分けて、教室で学べる生徒を10人以下にしようと試みました。
しかしながら、共働きや片親などで親が子供を見ることができないケースも発生し、こういった生徒たちのために「エブリデイ」という新たなグループを作り、毎日通学させていたそうです。
学校ではソーシャルディスタンスを保つために、生徒同士の間隔を6フィート(約180cm)空け、マスク着用、登校時の検温などを徹底して感染予防をおこなっていました。
先生たちは、独自の方法で自らの身を守る予防策を考案しました。
当時ハワイでは、アクリル板なども普及しておらず、オンラインショップなどでも高額な事から、ハワイのダイソーで売っているクリアケースをテープで繋げて防護板を作ったり様々な工夫がされたそうです。
ヒロセさんも試行錯誤して、アパレル用ラックを教鞭の前に180度囲うように置き、ラックに透明のシャワーカーテンを取り付けてパーテーション代わりにし、飛沫感染対策を行ったそうです。
「2年生の担任なので、口の動かし方など発音の教育もしなければならず、マスクは外して授業をするために考えた対策でした。」

2021年−2022年度の学校教育
ハワイの学校では新学期がスタートした8月より、100%教室での授業が始まっています。
ただしデルタ株の感染拡大なども同時期に発生したため、希望者は家からリモート授業を受けることが可能で、教師は学校ではなくハワイ州政府が決めた別の人が担当し、教師一人につき60人の生徒をリモートで教えています。
リモートを選択した場合、今年度1年間は継続してリモートで学ばなければならないというルールが定められています。
9月末の時点で学校に報告された感染者総数は約3700人。多い日で1日181人(8月23日)報告されました。途中からリモート授業に切り替える生徒も出てきており、現在はリモート授業のウエイティングリストがあるそうです。

現在の教室でのソーシャルディスタンスは3フィート(約90cm)となっています。低学年はソーシャルディスタンスを取らせるなどのコントロールが難しく、生徒と先生共にフェイスシールドを用いるケースもあるそうです。
また、去年リモート学習だったため、学業の遅れを取ってしまった生徒が多く、今年度はその取り戻しも含めて授業を進めているそうですが、このギャップを埋めるためにさらなるサポートが望まれています。
「アメリカの教育は、生徒個々のレベルに合わせて教えていくという考えがベースにあります。そのため生徒一人一人がわかるようになるまで教師が教えなければならないし、生徒の成績が悪いのは教師の責任となり、教師の評価へと繋がっていきます。
パンデミックの影響は甚大で、特にまだまだ幼いキンダーガーテンから低学年の生徒たちを助ける仕組みは重要だと思います。彼らの学習の遅れを取り戻すためにも、教育省が支援策やサポートを打ち出してくれたらありがたいですね。」
ヒロセさんからのリアルなトークから見えてきたハワイの学校事情。教師の安全の確保や苦悩、そして生徒たちの学習の遅れの問題とそれに付随する様々な課題。今後もこのコラムではハワイの学校事情を追跡取材していきます。

エリコ・ヒロセ
大阪府出身、オアフ島在住。オアフ島東海岸の公立小学校教師をする傍ら、ジュエリーブランド、リコ・アロハのオーナーデザイナーとしても活躍中。毎日アロハいっぱいの子供達に囲まれ、学業の大切さ、楽しさを子供達に伝えている。
Yuriko Galura (ガルラ百合子)
東京出身ホノルル在住。2008年ロサンゼルスのファッションスクールでファッションマネージメントを専攻し、2010年にハワイへ移住。2011年メードインハワイのファッション&アート産業をサポートしたいという思いから、ハワイ在住デザイナー&アーティストのためのマネージメント会社をハワイで設立。ハワイ在住を生かした独自のネットワークとコネクションを使って日々精力的に活動中。