【地球とともに暮らす人々のおはなし no.10】カウアイ島で生きていく。
- 2016/08/10

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no.10
カウアイ島で生きていく。

僕が生まれ育ったのはカウアイ島東部、ワイルア滝のふもとの谷の中。東京ドーム一個分くらいの広大な土地で両親は農業を営んでいました。野菜は豆類、大根やさつまいも、トマト、オクラなど、果物はマンゴーやバナナはもちろん、オレンジ、チェリモヤ、アテモヤ(シュガーアップル)、ライチや竜眼も栽培していました。敷地には小川が流れていて、池があり、手長エビの養殖も。動物がたくさんいて、牛、馬、山羊に、あひる、イノシシやイノブタも飼っていました。

小さい頃の遊びと言えば、釣りにいったり、ビーチでキャンプをしたり。時には懐中電灯を片手に、夜の真っ暗な川で手長エビを、海で伊勢海老をとったりもしました。もちろん、ボディボードやサーフィン、スノーケリングやダイビングも身近な遊び。海と山、自然があって動物がいる生活が僕ら家族にとっては当たり前でした。

カウアイ島に暮らす人の中でも、僕は特に自然に近いところに住んでいたのかもしれません。休みになると、リフエやカラヘオなど街に住むいとこや友達が「自然を楽しむために」遊びに来ていましたから。森では果物を、海ではオピヒ(カサガイの仲間)やシングル・アーチン(ハワイのウニ)をとって食べる。僕の普段の暮らしそのままが、彼等の遊びになることが面白いなと感じていました。

 

 

ただ、そんな自然の真ん中にいて進路には迷いました。その当時はガイドになるとは思ってもみなかったのです。きっかけは母親のひと言「ガイドになれば日本語がうまくなる」。当時の僕は日本語が下手、人前で話すことが何よりも苦手なシャイボーイ(笑)でしたから、度胸がつくと思ったのかもしれません。とにかく、必要とされる職種でしたから挑戦することにしました。

ガイドをやりはじめて思ったのは、日本語が下手だからこそ、お客様に楽しんでもらえることを一生懸命やらなければということ。カウアイの名所を巡って紹介するだけじゃなく、ロコとして自分ができることは何だろうと考えました。そこで、街に住む友達が自然の中の僕の家で楽しんでくれたことを思い出し、ヤシの実をむいたり、自生の果物を採って食べてもらったり、地元の人がやることをひとつひとつやってみたら、それがお客様にいちばんよろこんでもらえた。うれしかったですね。そこからこの仕事がどんどん好きになっていきました。

 

 

実はカウアイ島にここまで詳しくなったのは、ガイドになってからかもしれません。自分より島のことに詳しい友人と島内をまわり、カウアイ固有種やハワイ原種の動植物のこと、この島の地形や地質の特徴などを勉強しました。また、TVや雑誌などのカメラアシスタントやロケハンの仕事もするようになり、より良い撮影地を探す中で、今の僕のツアー名所のひとつ“秘密の展望台”を発見しました。

 


カウアイのことを知れば知るほど、日常だった自然や景色が実はとても特別なものだとわかってきます。島の随所にある“妖精・メネフネ”旧跡はカウアイの農業や漁業の歴史と密接に関係しており、そこにまつわる伝説も、カウアイに最初に移住したポリネシアン先住民の実話と神話とがひとつになった面白さがあります。新しい発見や古い歴史からの学びが、お客様のカウアイへの興味につながっていくことも、やりがいを感じます。

 


「メネフネ・フィッシュポンド」:メネフネが一晩でつくったといわれる養魚場。魚が一度池に入ると出られない高度な仕掛けもあり、メネフネは実在のカウアイ先住民とも言われています。

 

ところで、ガイドをしていると、ご案内しているお客様がどんなところに住んでいるのか興味がわいてきます。そこで一時期、日本、フィリピン、インドネシア、メキシコ、カナダなどを旅しました。ハワイの他島をまわり、そこでしばらくガイドもしたこともあります。日本は都市と地方のコントラストが激しいけれど美しかった。どの場所もそれぞれの個性があって魅力的でした。ですが、僕にはやはりカウアイがいちばん。カウアイの空や海、山、虹、おいしい自生の果物。ワイメア渓谷、カララウ谷など、何度同じ景色を訪れても、新しくその場所に立つ度に、ここがどれほど素晴らしいところか気づかされるのです。

 

 

カウアイ島の個性は、ハワイ州でもっとも古い島であるという点が大きいと思います。何より太古の自然がそのまま存在していることが素晴らしい。絶滅危惧種やカウアイでしか見られない固有種も多く生息し、ワイメア渓谷やナパリ・コーストなどの鋭利に切り立った山や渓谷の荘厳な美しさは、500万年以上もの時をかけ、雨風に浸食されて彫刻されたからこその造形です。

 

 

現代にいて、太古の自然の中で暮らす。それがカウアイで生きる醍醐味かもしれません。映画「ジュラシック・パーク」の世界も道路脇に。

 

 

当たり前と気にもとめなかった自然の恵みへの感謝、ハワイでいちばん古く美しい島に住んでいる誇りは、この仕事がくれたもののひとつです。お客様によろこんでいただき、カウアイ島を好きになっていただく度、この島に生まれ、今も暮らし続けていられることを本当にありがたいと感じるのです。

 

文章・写真 ©ボビー長尾

 

ボビーのガイドで行く カウアイ島の大自然アドベンチャーツアー

2016年9月1日(木)〜 6日(火)【5泊7日】実施予定!
ご案内はこちらから

500万年の大自然が残るカウアイ島。ツアー内容は大自然のアドベンチャーで、ワイメア渓谷ハイク、ナパリコーストへのスリリングなボートツアー、秘境のような道をどんどんと進んで、ワイルア川でのカヤック体験、滝からのダイビング!?ウミガメを間近に見るスイミングなどなど。カウアイ島の大自然を全身で味わいたい人にはうってつけの特別なエコツアーです♪


 

【Profile】
ボビー長尾(ぼびー・ながお)
1962年カウアイ島生まれ。カウアイ島の観光ガイドとして25年以上のキャリアを持つ、島を知り尽くす日系3世のエコ・ツアーガイド。カウアイ島の人々と自然を愛する彼が2003年に設立したのが、現在の「カウアイ・アウトドア・アドベンチャーズ&ツアーズ(K.O.A.Tours/コア・ツアーズ)」。ノースショアやワイメア渓谷、カヌー&カヤックツアーなど、全島にわたってエコアドベンチャーな体験プログラムをプロデュースする。
公式HP:http://www.koatours.com

 

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