【Aloha Interview Vol.65】ポリネシア型航海カヌーのクルー/内田沙希さん
- 2016/02/08

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一昨年、ホクレア号と一緒に世界航海に出発したヒキアナリア号のクルーとして、ハワイからニュージーランドへの半年間に及ぶ航海を遂げた内田沙希さん。カヌーのナビゲーターを目指すきっかけとなったのは、2007年のホクレア号との出会いだったそうです。現在ハワイと日本を行き来しながら夢を追いかける沙希さんに、航海を通して感じたことや今後の夢についてお聞きしました。


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HLC ホクレア号との出会いについて教えてください。

――2007年、ホクレア号が日本に来た時に、乗せてもらう機会がありました。その時は、ホクレア号の背景に何があるのが、ホクレア号がどういった意味で作られたのかということは知りませんでした。ただ、自然からの情報だけで航路を判断していくということにかっこよさを感じ、ナビゲーターになりたいと思ったのです。

 

HLC それでナビゲーションを学ぶためにハワイへ?

――当時は高校三年生で、今後の進路について考える時期でもありました。海が好きだったので、沖縄の大学に行って海洋生物について学びたいと考えていましたが、予定を変更してハワイに留学し、コミュニティカレッジに通いながらナビゲーションを学ぶことにしたのです。

 

HLC ハワイではどのような生活をしているのですか?

――現在ハワイには、ホクレア号のキャプテン ナイノア・トンプソンを含め5名のナビゲーターがいて、彼らにナビゲーションを学んでいる高校生や大学生くらいのロコのグループがあります。彼らと一緒にナビゲーションのことから、カヌーでの過ごし方、セールの上げ下げなどを学びました。また、ハワイでは毎日サーフィンをして過ごしています。キャプテンから「できるだけ海にいるように」と言われていますし、カヌーでもサーフィンでも釣りでも、何でもよいから海にいることが大切なので、皆なるべく海に行くようにしています。

 

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HLC ナビゲーションとはどのようなものですか?

――日本では“スターナビゲーション”として知られていますが、私たちは“ウェイファインディング”と呼んでいます。星から得られる情報をメインにしたものではないからです。星は夜しか出ていませんし、夜でも曇り空では見ることができません。最もよく活用するのが太陽ですが、それ以外にも周囲の情報全てを活用します。島が近づいてくると、浮遊物が見えてきますし、島から数キロ圏内までしか飛ばない鳥も飛んでいます。その鳥を見つけると、本当に島が見えてきます。

特に朝日と夕陽の情報が大切なので、その時間は必ず起きています。太陽が出た瞬間に風はどこから来ているか、海のうねりはどこから来ているのかなどを全て覚えておきます。そして、日中はうねりを参考に航路を判断します。風は変化しやすいのですが、うねりは変わらずに来てくれるので、その大きさや、来る間隔などを見分けます。風で発生したうねり、どこかの嵐で発生したうねりなどを見分けられるのが、すごいナビゲーターです。とても難しく、私もまだまだ勉強中です。

 

HLC ハワイのナビゲーターについて教えてください。

――実はポリネシアのナビゲーターは途絶えてしまっています。1500年ほど前に自分たちの祖先がハワイに着いて生活を始めると、もうナビゲーションを行う必要がなくなり、ハワイではナビゲーターが他の文化と一緒に途絶えてしまいました。ナイノアさんたちは、彼らがこの海をただ流れ着いたのではなく、ナビゲーションを活用して航海してきたと考えていて、それを証明したのがホクレア号なのです。彼らはミクロネシアにまだいるナビゲーターに学び、30年かけてナビゲーターとなりました。

 

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HLC 一昨年はホクレア号の伴走船“ヒキアナリア号”で航海されました。

――ホクレア号と一緒にハワイからランギロア島(タヒチの手前のツアモツ諸島)、タヒチとその周りのモーレア島、ワヒネ島、ボラボラ島などの島、クック諸島、サモア、スウェインズ島、トンガ、ニュージーランドと半年かけて航海しました。その後もホクレア号と一緒に最後まで航海する予定でしたが、事情によりヒキアナリア号だけハワイに戻ってきたのです。

 

HLC カヌーの上ではどのように過ごされているのですか?

――3グループに分かれて、ウォッチ(見張りのようなこと)を4時間交代で行っています。かじをとったり、セールの上げ下げをしたり。その他フィッシャーマンは釣りをするなど、いろいろな役割があります。コックさんもいます。フリータイムは眠ったり、ナビゲーションの勉強をしたり、ギターやウクレレを弾いたり、日記をつけたりと皆それぞれ自由に過ごしています。

 

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HLC 大変なことはありますか?

――カヌーの上は基本的にずっと揺れているので、そのリズムが合わない人は大変だと思います。私は慣れてきたこともあり、それほど大変に感じたことはありません。また、皆が一番気を使っていることは、人間関係です。最初の航海で大きなけんかがあり、ナビゲーションを教えてくれていたミクロネシアのナビゲーターが帰ってしまったことがありました。二度とそういうことが起こらないように、何か問題があれば皆で腹を割って話し合うようにしています。すると最初は関係がよくなかった人同士でも、最後には皆家族のようになって帰ってきます。

 

HLC 航海を通して感じたことは?

――一昨年の航海のテーマは「Malama Honua“地球をいたわろう”」でした。私にも、次の世代、子ども達に綺麗な地球を残していきたいという気持ちがあります。カヌーに乗って太平洋の様々な島を訪れ、言葉が通じずとも、行く先々で同じような心を持つ人たちにたくさん出会いました。カヌーで訪れた場所が、手を繋ぐようにつながっていくようで、これはカヌーがもっている力なのかもしれないと感じました。

 

HLC カヌーの持つ力?

――カヌーには、ハワイアンでもネイティブ、白人系、フィリピン系もいて、自分のような日本人も乗っています。様々な人種が集まり、カヌー自体小さな島のようです。周囲には自然しかありませんので、自然の偉大さを理解していないと、一瞬で死につながるような大事故になります。何が起こっても皆で助け合って、一緒に生きていかないといけません。それで最後には家族のようになって帰ってくる。そういうメッセージをカヌーは持っていると思います。それに、出発前に、ダライラマやツツ大司教などのすごい方たちがカヌーにお祈りに来ていました。人種も宗教も、言葉も超えて、“がんばって行っておいで”と。もしかしたら彼らには、カヌーを通して平和につながる何かが見えているのかもしれません。

自然が牙をむいたら自分たちなんて一瞬で無くなってしまう。そう思うと、自然を敬う気持ちは自分たちの中から自然に出てくるということも学びました。カヌーに乗せてもらって航海をしたことで、人生で学ばなければならないことをすごく自然な形で、ぎゅっと詰まって受け取れた気がします。

 

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HLC 今後の夢は?

――自分の夢としてはナビゲーターになることです。ナビゲーターの“ポー”という称号をもらうと、ただカヌーをナビゲートするだけでなく、人性をナビゲートする立場になります。そういうナビゲーターになれたらいいなと思います。

また、最近の自然災害のことを考えていると、物はいつか本当になくなるし、自分もいなくなる。続いていくのは子どもたちのそのまた子どもたち。そう思うと、次世代に対して私が経験してきたようなことを伝えていきたいという気持ちになりました。それをどのような形で行うのか、どうやったらより多くの子どもたちにつなげられるかはまだ模索中ですが・・・、例えば日本でホクレアのような物を作りたいと思っています。それがハワイのカヌーでなくても、ハワイで私が学んだようなことを学べるような場所になったらよいなと。いつになるかは分かりませんが(笑)

 

HLC 素晴らしい夢ですね。ありがとうございました。

 

【Profile】
うちだ・さき 1989年、神奈川県横須賀市秋谷出身。葉山町立葉山中学卒、神奈川県立七里ヶ浜高校卒。ハワイ大学機構カピオラニ・コミュニティ・カレッジ卒。PVS(ポリネシア航海協会)所属。

【取材場所】
OverEasy
ファーマーズカレー、旬の野菜の盛り合わせ、季節のスープなど、素材にこだわったホームメイドメニューが定評。デザートやドリンク、アルコールも楽しめる。料理は料理研究家の長尾智子さんが監修。
OPEN 11:30~18:30(L.O.)
月曜日定休(祝日を除く)
神奈川県三浦郡葉山町一色2151-1 SUNSHINE+CLOUD内
Tel:046-876-1908
http://www.sunshine-cloud.com/style/

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【取材後記】
年の暮れが近づきつつある小春日和の休日。葉山(神奈川県)にある心地よいカフェで、沙希さん母娘は私たちを迎えてくれました。ロコガールのような出で立ちで、自然にたたずむ彼女は、とってもステキな女の子。目指すべきところに向かって一心に取り組む純粋な眼差しとお話に、心が熱くなりました。沙希さんの夢、私たちも応援しています!!

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エディター MACHA 趣味:山で奉納フラ

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