マタニティヨガ・産後ヨガのスペシャリストとして、日本、ニューヨーク、ハワイで活躍し続けている初美・トレースさん。ご主人の仕事の都合で移り住んだハワイで出産・子育てをしながら、これまで何十人ものインストラクターを世に送り出してきました。「ヨガを通して女性のカラダをサポートしていきたい」。そう語る彼女に、ヨガや人生との向き合い方から、ハワイの子育て事情に至るまで、お話をうかがいました。

HLC まず、ヨガとの出会いについて教えてください。
――大学生の時、留学先のオーストラリアでたまたまヨガのクラスを受けたのが出会いでした。当時サーフィンをしていて、体を鍛えるためにジムに通っていたのですが、その日は疲れていたので、何となくゆるそうなヨガでもやってみようかと。すると、終わった後の爽快感がいつもと異なり、心がとても穏やかだったのです。呼吸に意識を向けるので、体の中からポカポカしてくる感じもありました。
それ以降、ヨガにはまり、度々ヨガのクラスを受けるように。日本に戻ってきてからもヨガを続け、社会人になってからは仕事で東京に行く度に、目的が仕事なのかヨガなのか分からなくなるくらい様々なヨガスタジオを巡っていましたね。
HLC インストラクターになったきっかけは?
――当時営業職をしていたのですが、あまりにもハードで、社会人4年目が終わる頃体調を崩してしまったんです。もう体が悲鳴を上げていると思い、転職を考えた時に、タイミングよく当時住んでいた福岡にホットヨガスタジオができることに。転職を決意してそのオーディションを受けました。
インストラクターになる前に3カ月間の研修があったのですが、とてもきつく、沢山の人が辞めていきました。それでも営業職で鍛えられた根性と意地でやり通しましたね。この期間で体もだいぶ柔らかくなり、同時に、ヨガを仕事にすることの厳しさも感じました。

HLC その後ニューヨークに渡られていますが。
――そのヨガスタジオに3年間勤めたのですが、主人の仕事の都合で渡米することに。その後1年と数カ月をニューヨークで過ごすことになります。当時のニューヨークはヨガブームで、1ブロックにヨガスタジオが1つあるほど。そしてマンハッタン中のヨガスタジオのレッスンをトライアルで受けられるチケットが80ドルくらいで売っていたので、それがほぼなくなるくらいヨガスタジオを巡りました
HLC マタニティヨガを教えるようになったのは?
――ニューヨークでもヨガのクラスを受け持っていたのですが、中には妊婦さんもたくさんいて、必要に駆られてマタニティヨガのティーチャートレーニングを受けたのです。当時は大きなお腹を抱えた女性にヨガを教えることに戸惑いがありました。それでも回数を重ね、生徒さんから「安産だった」と言われるとだんだん自信がついてきました。ただ、自分に妊娠・出産経験がない分、説得力に欠けるのではという不安はずっとありましたね。

HLC どのように払拭されたのですか?
――ある先生に、「自信がないのは勉強不足だから。生理学や解剖学についてちゃんと学んだのか。男性の産婦人科医でも自信を持って赤ちゃんを取り上げているのは、きちんと勉強しているからだ」と言われ、まさに図星だと。その言葉が心に強く刺さりましたね。
その先生からは本当にたくさんのことを学びました。妊活中の方や不妊で悩んでいる方、妊娠が途中で終わってしまった方への心のサポートなどを含め、本当に学びが多く、始めは必要にかられて始めたマタニティヨガでしたが、すっかりはまってしまいました。
HLC マタニティヨガの魅力とは?
――妊娠期間は、10カ月と限られています。妊娠初期はホルモンのバランスが不安定。胎盤が出来上がって安定しても、生まれる前にはまた不安定になり涙もろくなったり、心身共にアップダウンがあったります。お腹が大きくなるにつれ、不快感や腰痛なども出てきます。それらを、ヨガを通してサポートできるということにやりがいを感じます。
それに、幸せな妊婦さんたちと同じ時間を共有できることにも幸せを感じます。一番うれしいのは、出産後、産後ヨガのクラスに赤ちゃんを連れて戻ってきてくれること。この子がお腹の中にいたのかと思うと、「ああ、いい仕事しているな」と思ってしまいますね。
また、マタニティヨガクラスには、同じくらいの予定日の友達を作るために来る方も。今ここが痛むなど、悩みが同じだとすごく仲良くなります。そして子供達も同学年になるので、その後もずっと仲良し。そういう出会いの場を提供できていることもうれしく思います。
HLC ご自身で妊娠・出産を経験されて変わったことはありますか?
――これまで自分が教えてきたことが役に立っているということを改めて確認できました。自分の体を実験台にして様々なポーズを行い、「このポーズもっといける!」とか(笑)。それに、出産の時は呼吸がとても大切になるのですが、陣痛の時に呼吸に意識を向けるのはとても難しいいうことも身をもって分かりました。だからこそ陣痛と陣痛の間に呼吸に意識を向け、赤ちゃんに酸素を送ってあげるようにアドバイスをするのですが、そういうことも経験を元にお伝えできるようになりました。

HLC ハワイにご自身が代表を務めるヨガスタジオがありますが。
――ハワイへも、主人の仕事の都合で移住し、6年間過ごしました。移住した当初、ハワイでもヨガの仕事をしたいと思っていたのですが、当時はワイキキにヨガスタジオがなく、自分でヨガクラスを立ち上げることに。始めは、スタジオを構える必要のない、ビーチヨガからスタートしました。このクラスは今でもずっと続けています。旅先でも快適に過ごしたいという観光客の方が多く参加されていますよ。
今はハワイと日本を行ったり来たりし、マタニティヨガやキッズヨガのティーチャートレーニングを行なっています。これまでハワイでは30名、日本では40名ほどの卒業生を送り出しました。中には助産師さんや妊活中の方、還暦を迎えたが妊婦さんをサポートしたいという方など、様々な方が参加されています。
HLC ハワイでのライフスタイルについて教えてください。
――ハワイで行なっているビーチヨガクラスは6時半から始まります。今だと、ちょうど日が昇る時間。朝起きたら白湯や水をのみ、ビーチヨガクラスへ。ヨガは、空腹時に行うのが一番効果的です。そして暖かければそのまま海に入り、自宅に戻ったら半身浴をしてその日の気分で好きなスムージーをいただきます。
それでもまだ9時前。早く起きると時間を有効に使えてよいですよね。それから育児をバトンタッチし、主人は仕事へ。ヨガのクラスがある時間は、子供をベビーシッターに預けますが、小さかった頃は一緒に産後ヨガのクラスに参加させたりしていました。
HLC ハワイの子育て事情はいかがですか?
――温暖な気候なので、Tシャツとオムツだけ着せておけばよく、太陽の陽をたくさん浴びているので比較的体も丈夫に育ちます。レストランにはキッズミールが安くて充実していますし、子供が騒いでも皆暖かい目で見てくれる。子連れで外出するのがストレスにならないので、ママたちも気分転換ができますし、ベビーシッターが浸透しているので、夫婦で出かける時間も確保できる。とても育てやすいと思いますよ。

HLC 今後はどのような活動をされていく予定ですか?
――日本ではヨガインストラクターの資格を持っていても、実際に活躍できる場がそう多くはありません。マタニティヨガのティーチャートレーニングを受けてライセンスをとった人たちが活躍できるような場づくりをしていきたいと思っています。
また日本で、英語で行うキッズヨガも普及させたいと思っています。2カ国が話せると、子供の未来は大きく変わります。2歳から5歳にかけて、右脳が発達する時期に、ヨガをツールとして英語を学ぶことを普及させたいですね。
HLC ありがとうございました。
【Profile】
ハツミ・トレース 日本、ニューヨーク、ハワイでヨガを教えて12年。マタニティヨガ&産後ヨガのスペシャリスト。ハワイで代表を務めるHappy Hatsumi Yogaは、ヒルトンハワイアンヴィレッジで長年ビーチヨガクラスを開催。多くの有名人が参加し、リピーターも多く、老若男女幅広く支持を得ている。自身のヨガスクール、全米ヨガアライアンス認定マタニティヨガスクール(RPYS)Happy Hatsumi Yoga Academyを立ち上げ、全世界で通用するマタニティヨガ指導者資格である、全米ヨガアライアンス認定マタニティヨガRPYT取得コースをハワイで指導。女性の心と身体をサポートするヨガの普及活動に励んでいる。
HAPPY HATSUMI YOGA ACADEMY (RPYS)
①全米ヨガアライアンス認定マタニティ&産後ヨガRPYT資格取得コース in ハワイ
日程:3/23-3/29’2018 7日間集中コース 5期生募集中
https://www.happyhatsumiyoga.com/workshop②英語deキッズヨガ ティーチャートレーニング
日程:3/30 半日コース 2期生募集中
https://www.happyhatsumiyoga.com/kids-yoga③サンライズビーチヨガ
日程:毎週火曜〜日曜日(月曜定休)
時間:朝6:30〜7:30
場所:ヒルトンハワイアンヴィレッジ近くのビーチ
料金:$20
https://www.happyhatsumiyoga.com/beach-yoga④サンセットヨガ
日程:毎週木曜日
時間:季節によって開始時間が異なります。
場所:アラモアナビーチパークマジックアイランド
料金:$20
https://www.happyhatsumiyoga.com/sunset-yoga【編集後記】
「強く美しい。まさに多くの女性が憧れる女性像」という印象を受けました。人生に訪れる様々な転機を楽しみながら乗り越えられる強さは、天性のものなのでしょうか。私も目標に向かって頑張ろうと、元気をもらいました。日本に、ハワイに多くのファンを持つ初美さん。今後の活躍も見続けていきたいです。
